電源接続案件募集プロセスの現状と今後

・はじめに

現在の日本の送電網は、今日のような分散型発電の導入を想定しておらず、そこで浮上しているのが送電線や変電所等、送配電等設備の容量の問題です。

現在の系統が分散型発電に対して全く対応できないかというと、そういうわけでもないのですが、系統に係る様々な設備を効率的に活用するための技術は、まだ日本でも議論が途上です。そこで、まずは系統の不足を系統の物理的な強化によって補おうというディスカッションがなされています。しかしながら、単に系統から発電所まで電線を引く「電源線」とは異なり、系統側の送配電等設備、特に「ネットワーク側」と通称される上位の送電線増強や変圧器・開閉器などの追加ともなれば、場合によっては数百億円にものぼるコストがかかります。

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▲系統の概念図(中部電力サイトより引用)。今までは、ここでいう「配電用発電所」や「二次発電所」以下の送配電設備の増強で済んでいたが、現在では一次変電所より上位の系統も増強しなければ分散型発電所の電力を存分に系統に流し込むことができない状況が生じている。

では、送配電等設備という系統の増強コストを誰が払うのか。どのようにそのプロセスを明確化し、迅速化するのか。2013年以降、資源エネルギー庁の「電力システム改革小委員会 制度設計ワーキンググループ」で議論が続けられてきました。そこで打ち出されている基本的な考え方は「受益者負担」です。つまり、系統を強化することでメリットを得る人からお金を取ろうということです。その考え方に基づき、系統増強のコストを負担する事業者を決めるのですが、その中身は二段階に分かれています。

 

・系統増強における二段階のコスト分担

一段階目は、「特定負担」と「一般負担」という分け方です。「特定負担」とは、発電設備設置者が負担する分、「一般負担」とは、一般電気事業者が負担する分、という意味です。発電設備設置者は、発電した電気を系統に流すことで利益を得るわけですから、一定の受益者です。同様に、一般電気事業者とその後ろにいる需要家は、系統に電気が流れてくることで電気を使うことができるのですから、こちらも受益者だと言えます。その二者間でどのように分担するかという問題についてはややこしい議論があったのですが、資源エネルギー庁が2015年11月16日に「発電設備の設置に伴う電力系統の増強及び事業者の費用負担等の在り方に関する指針」という文書を出して、現在はそれに則って分担するということになっています。「ということになっています」という奥歯に引っかかるような言い方をしたのは、翌年に工事費負担金の請求で禁止行為があり、電力会社に行政指導が入ったりしたことがあるからです(参考記事)。系統増強の議論の中では、新設するついでに古い設備の更新と効率化を進めるという狙いもあり、どこまでが特定負担でどこまでが一般負担か、という線引きはやや複雑なものとなっています。

二段階目として、「電源接続案件募集プロセス」というものがあります。これは「特定負担」分を、複数の発電事業者で共同負担する仕組みです。このプロセスが対象とするのは「電源設置に伴い必要となる送変電設備(電源線、電圧調整装置等)の負担問題であり、 電気事業法の運用上、特定負担とされているもの」(第7回制度設計WG 資料6-3 p.26)です。このプロセスが定められた背景には、分散型発電の広がりによって、複数の系統接続案件をバラバラに処理していることが非効率であるという問題意識がありました。

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「この接続検討は、検討依頼者の計画の守秘性もあり、他者による近隣地域での電源設置の検討依頼があった
場合でも、それぞれ独立に処理される。この結果、最適な設備計画とならず、回答において示される検討依頼
者の負担金も無用に増大することとなっている可能性。」

第7回 制度設計WG 資料6-3 「広域的運営推進機関のルールについて」2014.7.30、p.22)

送配電等設備を発電所が作られるごとにちまちま増強していては非効率です。また、あまり大きくない高圧発電所でも同じ送電線沿いにたくさんできると、上位系統を増強しなければならない場合があります。そこで、複数の発電事業者が参加して負担を按分する必要がありますが、そのルールが定められていませんでした。その結果、それぞれの事業者がどれぐらい負担しなければならないのか不明であったり、あるいは法外な価格を負担しなければいけないと示されたりすることが、再生可能エネルギー導入の足かせになっているという認識がありました(第1回新エネルギー小委員会 資料3「再生可能エネルギーを巡る現状と課題」p.32)。

ただ、系統や連系する発電設備、需用量などは、各地域や状況によって異なることから、一律のルールで按分することは困難です。「個々の増強対象となる連系線は、期待される機能が異なることから、予め全てのケースを見込 んだ負担の配分方式を決定することは現実的でなく、また、一定の算出方法を策定して機械的 に当てはめることは、負担者の理解が得られにくい」(第6回制度設計WG 資料5-3 p.14)。そこで、それを決めるプロセスを定めようということになりました。これにより登場したのが「電源接続案件募集プロセス」なのです。

 

・電源接続案件募集プロセスの概略

プロセスの流れは、2015年以降、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が試行錯誤しながら定めています。OCCTOは電力システム改革の中で電力系統利用協議会(ESCJ)を引き継いで作られた団体で、2015年に発足しました(電気事業連合会「電力広域的運営推進機関の創設」)。この団体は広域の送配電網整備や全国規模の需給調整機能を有するべきものとされていて、戦前戦中の日本発送電株式会社を彷彿とさせるような、電力業界に対して広範で強力なイニシアチブを持つ団体になる可能性も秘めています。ただ今の所は、むしろ戦後の縦割りになった電力システムをほどいて結び直す作業に膨大な手間と時間を費やしている状況で、今後の推移を注視していきたいところです。

さて、肝心のプロセスの手続きは、現行では次のような流れとなります(OCCTO「電源接続案件募集プロセスの 基本的な進め方について」2016.8)。

まず、一定の条件を満たした発電事業者等がOCCTOに対してプロセスの開始を申し込み、それが受理されれば工事費の共同負担者を募集します。うちの発電所を繋ぎたい! という事業者がプロセスへ参加するために応募します。事業者が出揃って、その発電所の規模を全て足し合わせた総応募容量(kW)が明らかになったら、

工事費総額 = 総応募容量(kW)× 工事費用のkW単価

となるようにkW単価の最低入札価格が設定され、入札となります。これは工事費用負担のkW単価で競う入札で、工事費用を高いkW単価で落札した順に繋いでもらえるということになっています。応募者の中で入札を取りやめる事業者が出たり、いろいろなことがありますが、なんとか入札が成立すれば、次のステップです。各事業者ごとに再接続検討が行われ、入札対象工事以外の逆調対策費用や電源線費用等々が加味された最終的な工事負担金が出て、契約となります。

入札が成立するのは、高い工事費用を示すことのできる事業者が多い場所となります。これは、「特定負担の対象となる部分の設備については、より多くの負担金を負担する者を優先す る手続きを導入することで、発電設備の設置に意欲のある者の取組を優先していく」(第7回制度設計WG前掲資料)という発想で入札制度が導入されたことからそのようになっているものです。しかし、発電事業者側は想定される売電収入との見合いで負担できる額の上限を決めていくことから、実際は意欲云々というよりも、発電条件が有利な地域で系統が増強される流れになっています。

 

・各電力会社における系統の現状とプロセスの導入

具体的に、どこでプロセスが行われているか、自分が発電事業に取り組もうと思っている場所がプロセスに入っているかどうかは、OCCTOのページで公開されています。右リンクをご参照ください→「電源接続案件募集プロセス 実施中案件の更新情報」。現時点(2017.2)でプロセスが開始しているのは、太陽光発電に向いている地域が多く見受けられます。全ての送配電管内でプロセスがあるわけではなく、東北電力、東京電力、中国電力、九州電力の4電力内でプロセスが開始しています。

また、空き容量マップも現状を理解する上で重要です。資源エネルギー庁が2012年に示し、逐次改定されてきた「系統情報の公表の考え方」に基づき、各電力が系統にどれぐらい空き容量があるのかを公開しています。以下に各電力の系統空き容量マップのリンクを掲示します。

  • 北海道電力の空き容量マップ [187kV以上][110kV以下
  • 東北電力の空き容量マップ [全て
  • 東京電力の空き容量マップ [全て
  • 中部電力の空き容量マップ [全て(要ID登録)
  • 北陸電力の空き容量マップ [全て
  • 関西電力の空き容量マップ [全て
  • 中国電力の空き容量マップ [全て
  • 四国電力の空き容量マップ [全て
  • 九州電力の空き容量マップ [全て(PDF内リンク)
  • 沖縄電力の空き容量マップ [全て

プロセスを取り巻く状況について、電力会社それぞれの特徴を見ていきましょう。東北電力は9エリア、九州電力は13エリアと管内全域にわたってプロセスが開始されています。これはそれぞれ太陽光発電の拡大が大きく影響しているといえるでしょう。東北電力の中でも「東北北部エリア」は盛岡県、秋田県、岩手県の全域及び宮城県の一部を対象とする非常に大規模なものであり、OCCTOがプロセスを主導しています。対象地域があまりに広範に亘るため、他のプロセスとは異なる長期スケジュールで取り組まれる予定となっています。マップを見ても、青森から太平洋側を回ってくる線の空き容量は宮城県に入るまで軒並みゼロです。

九州電力は佐賀県を除く全ての県でプロセスが開始しているエリアがあり、そのほとんどで応募が終わっています。今後発電所の計画が出たとしても、原発の停止や蓄電池等の活用に一般電気事業者側が積極的でなければ、5年かそれ以上の期間は待たされる可能性が高いでしょう。九州では自営線で需要家に直売する形が今後広がってくるかもしれません。例えば、北九州市内の八幡製鉄所付近のエリアは、従前より新日鉄の自営線による特定供給が行われています。自営線供給については、戦前戦中の政策の影響により、未だに制度的制約が多い部分もあります。この辺りは、政府側の対応も待たれるところです。

東京電力のプロセスは、首都圏の周縁地域から始まっている点が特徴的です。大規模な需要地である東京都、神奈川県、埼玉県ではある程度充実した系統整備が行われていることから、容量がある程度確保されているという面があります。また、日当たりがよく地価が安い千葉県南部、栃木県北部、群馬県西部などでプロセスが開始していることは太陽光発電の影響を如実に表しています。外輪系統でみると、柏崎から東京への幹線群及び福島第二からの幹線、東北電力からの幹線だけまだ空きがある状況ですが、火力発電所がたくさんぶら下がっている千葉側の系統は皆逼迫しています。最終的には、埼玉と西東京を除く全ての地域で何らかの対応が必要となるでしょう。

中国電力についてはまだ1エリアでしかプロセスが開始されておりません。基幹系統の空き容量にはまだ余裕があると思われますが、瀬戸内海は太陽光発電の条件も良く、今後の推移を注視する必要がありそうです。

プロセスに入っているエリアのない電力会社のうち、北海道電力、関西電力、四国電力は、2010年度における電源構成比に原子力発電が占める割合、俗にいう原発依存率が高い順のトップスリーでした(電気事業連合会「電気事業60年の統計」0総括 9発電電力量 (1)10電力会社別を参照)。原子力発電のために十分な系統整備がなされていたことが、太陽光の導入にもプラスに働いたといえるでしょう。しかしながら、原子力発電所のために確保している容量があることから設備を十分に活用できていない面もあり、間接オークションという仕組みが新たに導入されようとしています。これについては項を改めて整理しようと思います。

中部電力については、浜岡原発周りの幹線と北陸電力からの幹線にはまだ余裕があり、名古屋中心部を迂回する幹線にも余裕があるため、まだプロセスに関する話は聞いたことがありません。今後あるとすれば、基幹系統が逼迫しつつある三重県や知多半島でさらなる系統接続ニースが生まれた場合ということになるでしょう。また、北陸電力については、日本海側であるため日照時間が少なく太陽光発電の建設が進んでいないことから、かなり系統に余裕があります。

沖縄電力については状況が全く異なります。空き容量は十分にあり、そもそも132kV送電線が最上位の基幹系統であるなど系統自体が本州各社とは別物となっています。系統の容量よりも需給バランスや電圧の急上昇急降下による電力品質の低下が問題となっており、短周期や長周期での系統状況に応じた出力制御が必要とされています。これは、風力発電の導入が進んでいる北海道電力や東北電力、四国電力などでも議論されている問題ですが、沖縄の場合は台風などで真っ暗な状態からまっさらな晴天の状態への変化が急激であり、変化をなだらかにするほど発電所が広く分布していないことから、太陽光発電においても同様の課題が示されています。この辺りは蓄電池の活用も含めて現在実証と実装が少しずつ進められているという状況です。

 

・今後の見通し

ここまで、系統増強コスト負担の制度のあり方と、電力各社の系統の現状についてざっと見てきました。これに基づいて、今後はどのような動きになっていくのか、簡単な考察を交えながら総括しましょう。

電力各社は、系統空き容量を公表すると同時に設備流通計画として今後どのように系統を整備していくか、その計画を示しています。しかしながら、日本全国が集中型電源から分散型発電へとすでに移行してきてしまっている現状を十分にカバーできるほどの莫大な設備投資が、直ちに行われるわけもありません。また、分散型発電を、集中型電源がたくさんある、という捉え方で系統を整備することは非効率的です。本来であれば、分散型発電の展開は大容量送電網を不要とし、系統の効率化と地産化を進めるべきものであるはずです。ただ、分散型電源を長い目でベースロードの一部に組み込んでいきたいという気持ちも理解できますし、そうすべきだと思います。

べき論はさておき、手元では系統の増強がゆっくりと進んでいく中で、発電事業者は二つの方法を取らざるを得ません。一つは、小規模な発電所を、系統の空きがある地域を狙って着々と建設していくこと。これはバイオマスなどある程度場所の制約が少ない発電事業や、地熱や小水力など系統を競合しない発電事業者に向いている戦略です。もう一つは、自営線などを活用して直接需要家に販売する方法です。風力や太陽光で大規模なものを新たに建設することは非常に困難な状況になってきていますが、大口需要家の近くに発電所を建設できるのであれば、むしろ価格的なメリットを提示しながら売電していくことができるようになる可能性が生まれてきています(グリッドパリティ)。

この二つとは異なる第三の道があるとすれば、蓄電池の活用でしょう。蓄電池のコストが下がれば、というたらればですけれども、例えば太陽光と蓄電池を組み合わせて24時間売電ができるようにし、まるでベース電源のように太陽光を活用することも可能になるかもしれません。しかしながら、蓄電池の活用には、電圧の制御、発電量予測、サイクルとコストの関係など、まだ低くないハードルがいくつも並んでいます。これらを初めにクリアした事業者から、新たなエネルギーの果実を得ることになるかもしれません。

将来的には、変動の激しい再生可能エネルギー発電と蓄電池の組み合わせによる安定した供給と、需要家が直接発電量に応じて需要量を変化させるデマンドレスポンスを導入することによって、非常に低コストかつ効率的で持続可能なスマートグリッドが実現することでしょう。そうなれば、むしろ配電系統や110kV以下の下位系統での需給調整によって十分な電力品質の維持と需給管理が可能となり、電力系統維持にかかるコストを大幅に圧縮することができることになります。エネルギーミックスの話はさておき、需要家にとって低コストでリスクの低い安定したエネルギー利用環境を提供するため、我々は日々研究と開発を進めています。

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